物語のテーマ、とか何とか


掲示板の方で、『Fate』の「テーマ」が話題になりまして。

僕は漫画でも小説でも、もちろんエロゲでも「テーマ」なんてものを重要視していませんし、その事は普段から公言しているつもりです。ですがその言葉とは裏腹に、僕が高く評価してるモノって、概ねテーマ性という面でもしっかりしているように思います。

……いや、別に今まで嘘をついていたわけじゃなくてー

「テーマ(主題)」というのは、描き手が「こういう事を表現したい」という根本的意図であり、物語を作っていく上での指針とか方向性になるものですよね。議論だってそうですが、テーマも無しに「さぁ、議論しろ」と言われても途方に暮れるじゃないですか。テーマは描き手にとっても絶対に必要なはずで、それ無しにきちんとした話が作れるとは到底思えない。描き手にとって「テーマ」とは、話を作っていく上で当たり前にあるものだと思うのです。もちろん描き手の意図が明瞭か不明瞭か、というのはあるでしょうけど。

しかし、そういった描き手のテーマを、読み手がそのまま読み取る必要は無いでしょう。例え描き手が「友情」をテーマにした物語であろうと、読み手が「努力」や「勝利」を読み取っても良いはずです。むしろ多種多様な読み方ができる方が、物語として優れているとも言えるでしょう。

つまり読み手にとっての「テーマ」は、描き手の意図とは全く関係無く存在してしまうわけです。描き手が「この物語のテーマは〜である」などと公言しない限り、読み手が語る物語のテーマは、常に読み手の感性を映した鏡でしかない。テーマとは、言わば物語が読み手に与えるものでもあると思うのです。どれだけ読み手の感性を刺激できるかが物語の良し悪しだとすれば、逆説的に、ある程度名作と呼ばれるようなモノは、自然とテーマ性が強くなるものなんじゃないかなと。