『重力が衰えるとき』(CutePlus)

ぬ? 『雫』の同人誌かいな、こりゃ懐かしい。『雫』のエロ同人とかだとあまり嬉しくない(エロ同人が嫌いなんじゃなくて、単に『雫』にそういうの求めてないから)んだけど、コピーを見る限りはきっちりストーリー漫画してるっぽいのが気に入った。未だに『雫』に入れ込んで漫画描いちゃうなんて、一体どこの物好きさんだい? と思ったら原作が原田宇陀児さんだとう!(後に奥付を見て知るのだが、そこには更科修一郎さんやら波状言論の名も。そうか、あの辺のサブカル系知識人たちの仕事だったか…。いいぞおまえら、もっとやれ!)

むう、原田さんの『雫』本となれば即ゲットするしかあるまい。
で、さっそく買って読んでみたわけだけど、1回読み、2回読み、読むでもなしにぼんやり眺めながら物思いに耽ったり、気がつきゃ2時間ぐらい経ってしまっていたさ。(って、いくら休みだからってアンタ…)

うん、これはねー、良い本です。
少なくともリアルタイムで『雫』に感動した人には。

内容は、普通の二次創作同人誌とはちょっと毛色が違ってて、表紙に書かれている通りにトリビュート・コミックと呼んだ方がニュアンスが伝わるのかな。僕らの暮らす世界が変わっていく様を、遠く遠く、すごーく遠くにある月の上から眺めている月島兄妹。人々にとって彼らは想い出でしかなくて、そして全ての想い出がそうであるように、彼らもまた既に一時の幻想でしかなくて…。

それは確かに勘違いや誤解と変わるところがないのかもしれないけれど、でも確かにあの日、僕らはその勘違いにこそ救われた。やり場のない爆弾を抱えて、つまらない日常を憎んだ10代の頃の貴方と。物語(フィクション)に出逢い、救われて今日まで生きてこれた今の貴方と。かって『雫』を愛した全ての人に読んで欲しい。


あの日にこぼれた涙の雫は、まだ変わらずにそこにあります。


一緒に買ってきたエロ同人についての仔細は……やはりよしておこう。
アスナ6歳 おしおき』とか、僕の尊厳に関わるからな。