季節外れの夢を見てる


水月 パッケージリニューアル版

水月 パッケージリニューアル版


水月 バレ
水月』はもちろん暑い夏の物語なんだけど、そこに最初から異質な存在として入りこんでくるのが雪さんだ。あれは夏に降るはずのない雪。起こるはずのない可能性。透矢のみた季節外れの夢物語なのだ。そういやブギーポップのイマジネーターは自称が「4月に降る雪」だけど、つまりはそういう感覚だ。「夏に雪なんて降るはずがない」というような常識というか固定観念みたいなものが、雪さんを世界から弾き出してしまうわけだ。

以前に『VSイマジネーター』をネタにした時も書いたことだけど、人間が想像できる事で、「実現の可能性が全くない」 と言い切れるものは一つもない。「知っている」ということ。それを「想像できる」ということ。作中でアリスが言うように、それはすでに「可能性として認めている」のと同じことなのだ。(それがどれだけ小さな可能性だとしても、だ)

水月』のビジュアルファンブックでは、透矢の子供の頃のエピソードが描かれている。暑い夏の日、雪ちゃん(子供の頃のことなので“ちゃん”付けで呼ぼう)は「山の中で雪が積もっているのを見た」というようなことを言い、それに対して花梨は「それは嘘だ」と一蹴する。ここで花梨が言っているのは「夏に雪が降るはずはない」という常識論だ。それでも本当に見たんだという雪ちゃんの言葉は、透矢にとって常識の外の新しい可能性だ。花梨と雪ちゃんの間には、常識と非常識を分かつ境界線があるのだ。