ジャンル分け

昔から僕は、フィクションをジャンル分けしたがる癖がある。ここでいうジャンルというのは世界観とか設定とかの話じゃなくて、なんというか作品の「面白さの種類」を端的に表すためのジャンルのことだ。

例えば『魔女っ娘ア・ラ・モード』や『まぶらほ』の世界は魔法がまかり通ってるから世界観的にはファンタジーだ。でも実際に作品に触れてみれば分かるけど、これらの物語はあくまで学園ラブコメの亜流にすぎない(『まぶらほ』は2巻までしか読んでないけど)。『うる星やつら』には宇宙人が山ほど出てくるけど、あれだってSFである前にラブコメ作品だろう。一方で『悪魔のミカタ』(これまた一巻しか読んでないけど)は学園が舞台で悪魔や魔法の道具(みたいなもの)が出てくるけど、何よりもまずミステリーとしての面白さが際立っていた。

これらの作品にとって魔法やら宇宙人やらは、作品に変化をつけるための飾り付けみたいなもので、「物語の面白さ」(ジャンル)とは別問題だと思うのだ。僕は作品を魅力別に振り分けたいのである。つまり僕にとって「ジャンル分け」というのは、主観を抜きにしては語れない批評の第一段階なのだな。

なにか理解不能な現象が起こったとする。何でも良いんだけど、例えば密室殺人事件とか。こういった論理的に不可能に見える現象を、どうやって読み手に受け入れさせるかが、言ってみればジャンルの違いだ。


パターンA …… ミステリー

提示されたロジックの組み合せにより抜け道が発見され、不可能に見えていた現象が論理的に説明される。パズル的。不可能が可能になっていく過程を辿る面白さ。さもなきゃ謎が謎でなくなっていく面白さ、とでも言えばよいかな。


パターンB …… SF

提示されたロジックだけでは説明不可能だけれど、そこに常識を超えた超論理(主に擬似科学。例えば波動関数の収縮阻害による量子論的トンネル抜けとか)が新たに提示されることによって、不可能に見えていた現象が劇的に説明される。この新たなロジックの登場による理性への驚きをセンス・オブ・ワンダーという(たぶん)。ミステリが「不可能が可能になっていく過程」だとすれば、SFは「不可能が可能になる瞬間」の面白さ、とか言えないだろうか?


パターンC …… ファンタジー

説明されない。起こってしまった現象をそのまま受け入れる。あるいは非論理的な説明(祟りとか幽霊とか魔法とか)がなされる。密室殺人の場合だとホラーになるかな。理性より感性に訴えかける面白さと言える。というか感性に響かないファンタジーは寒い。論理的整合性に困って、それをその場凌ぎの魔法や奇跡で説明しちゃうようなのは最悪だ。描き手のセンスが一番要求されるジャンルかもしれない。


こうやって違いをデフォルメして書いてみたけれど、実際にはジャンル分けに凄く迷うときがある。特にSFとファンタジーは考えれば考えるほど判らなくなる。例えば魔法なんてのは、非論理的というべきか超論理的というべきか、ぶっちゃけ想像の産物という点で変わりがない。『水月』や『Fate』なんかは、その辺を意図的に曖昧にしているわけだ。(……というわけで、僕が『水月』をSFと言ってみたりファンタジーと言ってみたり、その場その場で態度をコロコロ変えたとしても大目にみてもらえるとありがたいです。実際問題、その日その時によって感じ方が違うのよ(笑))


ひぐらしのなく頃に(体験版)


鬼隠れ編まで。
僕はこれ、やる前はミステリーだと思ってたわけですよ。プレイヤーが謎を解くっていう趣旨らしいから。でもこれ、ホラーにしか見えないんですけど。本当に論理的な説明なんかできるんかいな?(汗)