ミナミノミナミノ

ミナミノミナミノ (電撃文庫)

ミナミノミナミノ (電撃文庫)


読了。読み切りかと思ってたら2巻に続きます。
あとがきで秋山瑞人本人が書いているようにイリヤっぽい話。


しかしちょっと夢見がちで子供っぽかった浅羽と違って、ミナミノの正時は大人びている。浅羽にとってイリヤが最後まで「不思議」であり続けたのに対し、正時の環境適応能力は凄まじいスピードで岬島を解体していく。(ただしその正時ですら追いつかないほどに、岬島の「不思議」は異常である)


8回の転校を繰り返したヤツは、「プロの余所者」である。どれだけ環境が変化しようと、ヤツは器用に立ち回り、あとを濁さずに去っていく。だがそれは、単にヤツが衝突を避け続けてきただけだ。乗り越えるべき高波を避けるのが上手すぎたのだ。


8回にも及ぶヤツの世界の断絶は、「17、20、16、9、21、15、12、13」という出席番号の変化だけを残して、まっ平らなアスファルト道路のように舗装される(そういや作中で正時は泥のぬかるみを歩かされるな。そうか、それでか)。ヤツの過去に残された僅かな思い出の起伏は、「クラスの女の子が授業中にだけ眼鏡をかけた」なんていう程度の非日常に過ぎない。


ああ、なんかすげぇ共感してしまった。っていうか、自分が何で「授業中だけ眼鏡をかける女の子」なんてシチュが好きだったのか唐突に気付かされてしまった。僕は人一倍「変化」を怖がるくせに、本当はその程度のささやかな「変化」にすらも憧れていたのか…。


まいった。秋山瑞人さんが凄いなんてのはとっくの昔に知っていたはずなのに、またもや不意打ちのように胸をいっぱいにさせられてしまった。2巻が待ち遠しい。