白貌の伝道師


僕にとって剣と魔法のファンタジーっていうと、中学のとき読んだロードス島戦記が一番馴染み深かったりするんですけど、俺、ちょっとヌルいっすか? でもまぁ、「エルフは耳がとがってて迷いの森に住んでいる」とか、その辺の設定はやはりお約束なので、すんなりと世界に入っていけました。


うわぁい、主人公、すっげぇ邪悪だぁ〜〜(愉しそう)


以下バレ


いやはや、ベクトルが違うだけで、これは純然たる英雄譚ですね。正義の味方が主人公の場合、そいつがあまりにも完璧超人だったりすると話として薄っぺらくなりがちなんだけど、これが悪党の側だと実にさまになります。卓越した剣技と智謀、それらを殺戮と破壊のため だけ に傾ける圧倒的邪悪。いわば悪のために悪をなす真の悪党! ……好きだなぁ、こういうの(笑)。あとになって気がついたけど、タイトルロゴの“の”の部分が仮面をモチーフにしてるのね。これがまた狡猾そうに笑ってるんだぁ(笑)。


物語に深みを与えてるのがアルシアの存在ですね。バイラリナとなった彼女は、いわばサイスにとってのアインと同じです。裏切られ、絶望を知るたびに、安息を求めて虚ろな人形に成り果てていくアルシア。彼女の魂を消し去るのはラゼィルでも混沌の神でもなく、ただ光の側の与えた絶望のみ、というのがまた虚淵さんらしくて良いです。


あと巻末にある、龍骸装の詳細設定も良かったです。群鮫は切っ先がぶつかると“重剛”の魔力発動とか、なんかゲーム的で読んでるだけでワクワクしますね。