邪魅の雫

邪魅の雫 (講談社ノベルス)

邪魅の雫 (講談社ノベルス)


邪魅という妖怪は言い伝えられている情報が少なくて、京極夏彦御大の『邪魅の雫』においても京極堂による事細かな妖怪解説は結局されることがなかった。とはいえ、御大が邪魅という妖怪をどのように解釈していたかは、作品内容やインタビューでの受け答えから推測することができる。まず(ソース忘れたけど)インタビューから得た情報。石燕の『今昔画図続百鬼』によれば、邪魅は「魑魅の一種」とされ、本のなかでも魍魎の隣のページに配置されている。そのことを御大は重要視していたらしい。


それともうひとつ、京極堂シリーズにおけるタイトルの法則性である。御大によれば、このシリーズのタイトルは、妖怪の名前が“作品構造”であり、続く漢字一文字が“作品のテーマ”であるらしい(これまたソース忘れたけど)。つまり『魍魎の匣』で言えば、「魍魎」が作品構造で「匣」がテーマということになる。作品構造とは事件の構造だから、魍魎とは「複数の事件の境界線を曖昧にして、総体としてのブラックボックスを作り上げてしまう妖怪」と言って良いと思う。


この魍魎の横に邪魅が配置されていることを御大は重視していたわけだから、邪魅とは魍魎とシンメトリ、さもなきゃコントラストを描いた妖怪ということになる。その上で『邪魅の雫』の作品内容を踏まえてこの妖怪を解釈するのであれば、邪魅とは「ブラックボックス的な人間の心に邪な枠組みを与えて、次々と同じ構造を持った事件を生み出していく妖怪」だったのではないかなと僕は思う。


しかしこの『邪魅の雫』…。
このタイトルで、このテーマで、あの登場人物………。



ひょっとして御大はエロゲーマー?