猫の地球儀 ネタバレ
- 作者: 秋山瑞人,椎名優
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2000/01/01
- メディア: 文庫
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焔 『お前さあ、どうしてスカイウォーカーになんかなったんだよ?』
幽 『はぁーい! それは、ぼくの胸の中には夢とロマンがあふれているからでーす!』
俺は真面目に聞いてるんだよ、と即座につっこむ焔の洞察力は、おそらく正しい。幽のロケットは、夢やロマンを燃料にしているわけではない。ヤツの作ったロケットは、そんな抽象的なモノでは断じてない。
テストを積み重ね、あらゆるリスクを予測し、それに備えることの出来るものだけが地球儀に行ける。幽は確かにロマンチストなのかもしれないけれど、それ以上に徹底的なリアリストなのだ。
そしてそんなリアリストの幽だからこそ、「地球儀に行く」というその目標に、何の意味もないことを知っている。例え幽一匹が地球儀に行けたとしても、トルクの世界は何一つ変わらず、幽はただ黙殺される。全くの無意味だ。幽ほどの猫がそれを理解していないわけがない。だからこそヤツは、半ば準備を終えながらも、地球儀に向かうその日を延ばし延ばしにしてきたのだ。
『ぼくは、友達が欲しかったんだ』
それは狂おしい程にヤツの本音だ。ヤツが必要としているものは、ヤツの夢とかロマンといった抽象的なモノを、本気で信じさせてくれる仲間なのだ。
幽は「魂が燃える光はゴミの燃える光である」と言い切れるほどのリアリストであり、そんな幽のロケットを飛ばす最後の燃料となったのが、「地球儀に行ってしまった神楽に『魔法の粉』を届けること」であるのは、トンでもなく抽象的で、だからこそ凄くロマンチックだよなー、とか思う。こういう話は大好きだ。