腐り姫 〜euthanasia〜 (バレ)

腐り姫

腐り姫


なんか凄く良いゲーム……だったような気がしないでもない(汗)。細部に関してはモロ好みだったのだけれど、どうにも全体構造がぼやけてて手放しでは褒められない。主人公の両親の事情とか、断片的すぎて何言いたいのか全然わかんなかったんですけど。ちょっと僕には手に負えないゲームだったかも。


サブタイトルの「euthanasia(安楽死)」について。物語は安楽死を(たぶん)倫理的なものとして描いているんだけれど、別にそれを正しいとか間違ってるとかいう主張はしていない(してないよな?)。ただ、倫理という人の領分を守ろうとすれば、自ずと切り捨てられてしまう人の想いがあることをこそ描く。そこでまぁ、近親相姦とかが絡んでくるわけですな。



たとえば青磁の母親は、ベッドで寝たきりの青磁の父親を安楽死させる。その判断は倫理的に妥当な判断だったはずだけど、その行為を青磁は認めることができない。同じく五樹の父親の健昭は、妻の朱音を殺してしまったらしいのだが(おそらく安楽死と思われる。仔細が全くわからんけど)、その死を当の健昭自身が割り切れずにいる。


青磁も健昭も、安楽死という倫理的ルールを(良くも悪くも)受け入れることができない。だからこそ彼らは苦しみ続けるしかない。倫理と、その倫理に背いてしか生きられない人たちの苦しみ。物語は、この構図に近親相姦を当てはめて描く。たとえば倫理にしたがって良き母であろうとする一方で、倫理に背いて女として五樹を愛そうとする芳野の葛藤が描かれたりするわけだ。今になって考えると、たぶん(“たぶん”とか“おそらく”が多いな)全キャラこの構図で描かれてたんじゃないかなぁと思うんだけど、伊勢のエピソードってそんなんだったっけ? よく覚えてないし、自信なし。(つーか、このゲームってリプレイできないんだもん! セーブしてないところを読み直すには、データ全消去するしかないらしい。めんどくせぇ〜〜〜ッ!!!)


彼らのように、人の倫理に収まりきれない想いを抱え、その痛みに苦しみながら生きる者たち。そういった者たちの想いを腐り姫は腐らせる。腐り姫に食べられ、抜け殻となった者たちは、人の世においてはむしろ幸福に生きられるだろう。そうして代償として失った彼らの想いは───「赤い雪」になる。


道徳や倫理を踏み外してしまった人の想いが、切り捨てられたその罪が、この世ならざる世界に「赤い雪」となって降り積もる。作中で「腐り落ちた果実の甘い匂い」という表現が多用されるのだが、その響きのなんとおぞましく、そして美しいことか。あれは、つまり彼岸なのか。


物語スタート時点の五樹は既に彼岸に渡っており、その身はもはや五樹の抜け殻でしかない。抜け殻になってしまった男と、最初から何一つ持っていなかった女が出遭い、いつしかそこにまた一つの想いが生まれる。この物語はそういう話だったのではないか、と思った。全然違うかもしんない。


あと文句。んー、正直言って、最後の蔵女には興醒め。蔵女って結局は妹の樹里とまったく関係ないんだよね? だったら蔵女と樹里を混同させるような表現や設定(姿が似てるとか)は避けた方が良かったと思う。流れ的に、真のヒロインの蔵女=樹里だと思い込んでしまっていたので、どうもそうじゃないらしいと判ったとき、ぶっちゃけ蔵女のエピソード自体が余計に思えてしまった。唐突なSF設定も、話をややこしくしただけのような気がする。くどいようだけど、このゲームややこしすぎ。わけ判らんところが多すぎ。何言ってるかよく判らん話って僕は苦手なんだよなぁ。あとになって色々と手のひら返すかもしれないけど、そのときは察してください。